企業活動の総括として記されるのが企業決算であり、いわゆる企業の通信簿とも称されています。特に、証券取引所で発行株式の売買を可能とする上場を行った企業では、有価証券報告書と呼ばれる決算書を開示する必要があり、国内外の投資家から最も注視されている報告書とされています。これは、金融商品取引法に規定されているもので、各事業年度末から3カ月以内の金融庁への提出が義務付けられています。さらに、2006年からは証券取引法の改正により四半期毎の決算報告が義務化されました。
東京証券取引所の調べによると、国内上場企業に対する投資部門別の株式保有比率では外国人投資家が全体の約3割に上る一方で、有価証券報告書の英語版を開示している企業はおおよそ半分程度とのことです。現在、英語版の作成は義務化されていませんが、英語版を作成する企業は年々増加傾向にあり、国内外の投資家にアピールするためにも翻訳の必要性が高まっています。

有価証券報告書の翻訳に欠かせないポイントとは?

有価証券報告書は一定の様式に沿って記載されています。企業そのものを丸ごと説明するようなもので、「企業概況」にはじまり、「事業の状況」、「設備の状況」、「提出会社の状況」、「経理の状況」、「提出会社の株式事務の概要」、「提出会社の参考情報」、「提出会社の保証会社等の情報」の大項目によって構成されています。

非常にボリュームのある報告書であることから、有報の翻訳には用語の整合性をはじめとした全体の一貫性が極めて重要となります。投資家は有報によって開示された数値を指標化して分析を行い、また、過去のデータとも照合して企業活動を評価します。このため、歴年の報告書との整合性が翻訳をする上での基盤となります。

また、四半期開示報告書、いわゆる「決算短信」やそれに付随するパワーポイントなどでプレゼンする「業績説明資料」なども同様に首尾一貫とした翻訳スキルが必要とされます。
加えて、日本では2010年以降、IFRS(国際会計基準/国際財務報告基準)という国際的な会計基準を採用する企業も増加しており、国際的な枠組みに準拠した報告書にも翻訳面で対応することが求められています。
以下は、有報の押えておくべき翻訳のポイントを挙げています。

用語統一こそ有価証券報告書の翻訳の肝

有価証券報告書には、いわゆる決算書と呼ばれる「財務諸表」が中心として存在します。「財務諸表」では、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の「財務三表」が重要な構成要素となり、これらの会計の勘定科目が他のパートにわたって多用されていることから、用語の整合性を欠いた場合には混乱を招きます。

このように重要な用語統一に対しては、金融庁から「EDINETタクソノミ用語集」という雛形が公表されています。英語名称は参考訳との位置づけですが、これらの用語に沿って訳すことが通例となっています。

また、業務の説明に関しても、一貫性を欠く用語・表現が複数存在すると、内容の正確性が失われてしまいます。翻訳に際しては、企業のHPで使用される用語等をしっかりと把握するなど、用語を厳格に管理することが肝要となります。

 

専門性の高い財務翻訳には会計知識がベースになる

財務諸表を中心に構成される有報は、会計知識が翻訳のベースとなります。会計処理に生じる仕訳業務などの理解や税制度の知識があってこそ、複雑な財務報告の内容を他の言語に置き換えることが可能となります。非常に専門性の高い報告書の翻訳作業を行う翻訳者には、難関と言われる公認会計士の資格保有者や、監査業務に携わった経験がある者などが多く、豊富な知識で報告書の内容を細大漏らさず翻訳しています。

事実を正確に伝える正確さと忠実さ

有報や決算短信の翻訳作業は上に挙げた、統一性と専門性が前提となりますが、同時に原文に対する正確かつ忠実な翻訳が必要となります。事業環境や財務状況の変化などは微妙な表現で説明されることが多いため、その内容をしっかりと理解し、原文に忠実に翻訳をしないと誤った意図を伝える恐れがあります。小説などの読み物は文化的違いを考慮して意訳して表現することが翻訳のコツになりますが、事実関係で積み上げられている報告書には、原文に対する正確性、忠実性が大切となります。

翻訳に大事なことは文章力に加えて迅速さ

しっかりと翻訳を仕上げても、納期に間に合わなければ無用の長物となってしまいます。有報や決算短信は一定期間内での開示が義務付けられているので、期末で確定した数字を基に報告書を急いで作成しなければなりません。英語版は報告書の作成義務はないため、日本語版に遅れて英語版を作成するケースがこれまで多く見られていましたが、全ての投資家に公平な情報開示が基本とされているため、特に四半期決算などは日英同時開示を実施する企業が増えています。このため、翻訳作業には迅速さも大きな要素となっています。

サイマリンガルは、金融のグローバル化をサポート致します

サイマリンガルでは、創業以来、金融・財務分野に注力してきた実績があり、数多くの有価証券報告書や決算短信などの財務関係の翻訳を手掛けています。
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