2000年初頭に発生した巨額な粉飾決算事件である所謂「エンロン・ショック」に端を発した不正会計事件が日米で相次いで明るみになったことから、2002年に米国でSOX法(上場企業会計改革および投資家保護法)が、日本でも証券市場の信頼回復を目的に日本版SOX法(従来の証券取引法を改正、金融商品取引法として制定)が2006年に成立しました。不正会計事件には、企業の財務報告への監視が適切に機能していなかったことが背景にあったことを踏まえ、改革された法制度の主眼点として、適正な財務情報の公表に至るプロセスを監視する機能を持たせています。決算資料には、財務諸表の監査と伴に、「内部統制監査報告書」の公表が必要となりました。
このように厳正な監査業務の信頼構築が潮流にあるなか、監査報告書類の翻訳においても正確性が最も重要な要素となります。

「監査報告書」は経営者の情報開示の正確性を客観的に検証

企業は自社の活動内容を財務面から株主に対して報告しますが、その際、恣意的に記載している場合、株主の投資判断を欺くことになってしまいます。このため第三者による厳正なる監視機能を設けて透明性と正確性に裏付けられた信頼性を担保することが監査機関の役割であり、その証として監査人の「意見」を記したものが監査報告書になります。
具体的には、経営者が作成した財務諸表等の計算書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成され、財政状態や経営内容が適切に表示されているか、監査人が検証し、その結果に応じた意見を表明します。

大企業においては、会計監査人による監査が義務付けられ、その後、社内の監査役による監査を受けます。計算書類は、定時株主総会で承認を受ける必要がありますが、会計監査人設置会社で一定の要件を満たす場合は、株主総会の承認は不要で報告事項となります。

「内部統制監査報告書」は財務報告に関わる内部統制の有効性を検証


上場企業では金融商品取引法に従い、「財務諸表」の内容に対する「監査報告書」と伴に、「内部統制報告書」および「内部統制監査報告書」の公表が義務付けられています。これは財務報告に至るプロセスの仕組みなどといった内部統制の有効性を評価した内容を記載するもので、外部監査人(監査法人や公認会計士)の監査を受ける必要があります。

「監査報告書」「内部統制監査報告書」の分類と構成

「監査報告書」および「内部統制監査報告書」はともに、監査人の監査結果として「監査意見」として表明・記述されます。内容上、監査意見は、次の4つに分類されます。

・無限定適正意見:一般的な会計基準に従い記載内容が適正に表示されていると確認される
・限定付適正意見:一部不適切な部分を記載の上、条件付きで適正であると認められる
・不適正意見:記載内容に著しく不適切な部分があり、不適正であると認められる
・意見不表明:監査証拠不足により記載内容が適切か否か判断できず、意見表明ができない

上記、監査意見を含め、監査報告書は以下の表明項目によって構成されています。

1.監査意見
2.監査意見の根拠
3.監査上の主要な検討事項(2021年3月期有価証券報告書から追加)
4.財務諸表に対する経営者、監査役、監査役会の責任
5.財務諸表監査における監査人の責任
6.利害関係

監査報告の内容を適切に伝えることが最重要ポイント

監査報告書は、表記内容に問題がないかどうか検証した結果を伝えるものであるため、翻訳に際しても、正確な表現で置き換えることが重要となります。
また、2018年7月の監査基準の改訂により、「監査上の主要な検討事項(上記構成項目の3番目)」の項目が新たに追加され、2021年3月期有価証券報告書から義務化されました。

これは、監査過程において監査人が専門家として特に重要であると判断した点を記すもので、特記した理由や監査内容などが述べられます。このように非常に専門性の高い内容であることから、財務・会計知識が翻訳する上で、何よりも必要となります。

専門的知識を駆使して正確に翻訳することは、監査報告書という投資活動の信頼性を構築する機能の一端を担うものであり、監査の意図を適切に伝えることが最も重要なポイントとなります。

サイマリンガルは、「有価証券報告書」「監査報告書」の翻訳を専門的に扱っています

サイマリンガルでは、創業以来、金融・財務分野に注力してきた実績があり、特に、有価証券報告書や監査報告書の翻訳を多数手掛けてきました。
各専門分野に精通した翻訳者を国内外に多数抱え、質の高い翻訳サービスの提供によって、
海外市場に向けたビジネス発展のサポート役として力を発揮します。
財務・会計・IFRS関連の翻訳については、こちらをご覧ください。

コラムトップへ戻る