2000年以前、企業が自らの成長・拡大に対して過度に重きを置いた経営が横行し、経営者はステークホルダーと呼ばれる利害関係者の利益を損ねるなど歪んだ経営の弊害が社会問題化しました。こうした背景に企業統治(コーポレート・ガバナンス)という経営面に対する監視機能を強化する国際的なトレンドが生まれ、日本でも複数の指針等が打ち出されています。
 経営者は自社内の役割・責任を明確化して外部に発信することが求められ、こうした報告書類の提出や開示が多く見られており、これらの文書を翻訳する機会が増えています。
 コーポレート・ガバナンスに関する書類の翻訳は、法制度の改定などを受けた新たな用語への対応を含め、定款などの社内文書との整合性を取るなどの細かな配慮が求められます。

コンプライアンスに派生した企業の開示義務が近年増している

 法令遵守を意味する「コンプライアンス」という言葉が世間一般に定着し、企業が法令や社会ルールを守ることを指す用語としても浸透しています。企業は社会的責任を担いながら活動するという考え方は、企業の内部統制、コーポレート・ガバナンス、そしてCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)などといった目的に応じた枠組みにおいて近年発展してきました。

 こうした背景に企業は健全な経営を目指したルール作りや、取組状況を報告・開示することが求められています。例えば、「内部統制」(会社法と金融商品取引法で制定)は、法令遵守を目的とした社内向けの仕組みである一方、「コーポレート・ガバナンス」は、企業の不祥事を防止し、株主の権利を保護するための対外的な経営監視の仕組みになります。

コンプライアンスに派生した企業の開示義務が近年増している

 コーポレート・ガバナンスは法制化されてはいませんが、2006年以降、証券取引所の規則改定により、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の開示が求められるようになりました。その後、リーマン・ショックを背景とした企業統治への取組みが強化されるなか、2014年に金融庁の有識者検討会において、企業統治の向上を目的に機関投資家が実践すべき諸原則をまとめた「日本版スチュワードシップ・コード」が策定されたのに続き、翌年には金融庁と東証がガイドラインとなる「コーポレートガバナンス・コード」を公表しました。
 これは、実効的な企業統治を実現するための主要原則を取りまとめた条文であり、5つの基本原則により成り立っています。直近では、2021年に改訂が行われました。

 上場企業では、この指針に対して「遵守か説明(コンプライ・オア・エクスプレイン)」を原則とし、遵守するか、遵守しない場合はその理由を、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」において説明することとなりました。

「コーポレート・ガバナンス報告書」は以下から構成されています。

I コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報
II 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況
III 株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況
IV 内部統制システム等に関する事項
V その他

内部統制機関の翻訳は用語の選択が最も重要

 企業統治を実効的なものにするため、上場会社であれば取締役会や監査役が、大企業では会計監査人(公認会計士/監査法人)と監査役が、両者の場合は監査役会の設置(監査役会設置会社)が必要になります。また、2005年の会社法制定により、指名委員会等設置会社が、2014年の同法改正時には監査等委員会設置会社の選択が可能になっています。

 これらの内部統制機関に関する英訳は、新たな機関に移行した場合に伴って呼称を変更する場合がある一方、これまで使用してきた用語に一部修正を加えるだけのケースなども見られており、各企業の方針に従って用語を選択します。
 また、公益社団法人日本監査役協会では英文呼称について以下のように推奨しています。

【監査役等の英文呼称】
監査役制度について海外から正しい理解を得られるよう、日本監査役協会では監査役等の英文呼称につき、以下を推奨しています。

呼称 推奨案 従来
監査役 Audit & Supervisory Board Member Corporate Auditor
監査役会 Audit & Supervisory Board Board of Corporate Auditors

また、法務省が運用している法令データベースでは以下の名称が使用されています。
監査役会設置会社  :Company with a Board of Company Auditors
指名委員会等設置会社:Company with a Nominating Committee, etc.
監査等委員会設置会社:Company with an Audit and Supervisory Committee and Directors

その他、社外取締役(社外監査役)の用語は、以下のように各企業で異なった英訳が見られています。
independent director / outside director / external director

 これらの用語は、コーポレート・ガバナンス報告書と伴に、定款や有価証券報告書、サステナビリティ報告書、統合報告書、会社案内など、さまざま開示書類のなかで記載される用語であるため、これらの報告書を読む投資家などが、用語のバラツキによって指し示す内容に混乱が生じないよう、翻訳をする際には用語の整合性を確実にすることが最も重要なポイントとして押さえる必要があります。

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