近年の国際社会のグローバル化は目覚ましく、日本国内においても外国語を耳にする機会は確実に増えています。とくにビジネスにおいては、すでに海外の企業とのやりとりが当たり前になっており、複数種類の言語を使い分ける場面も珍しくありません。

それでも依然として、専門性が高い技術として認知されている語学を用いて、企業の文書を翻訳するサービスの需要は高いです。

そこで、今回はそのなかから、金融翻訳について取り上げます。金融翻訳の概要、求められるスキルや、実際に翻訳を依頼する際のポイントを見ていきましょう。

金融翻訳とは

金融翻訳とはその名のとおり、金融分野関連の文書を和英翻訳、または英和翻訳することです。

翻訳の対象となる文書や分野は非常に幅広く、銀行への預貯金や株式、債券、外国為替の売買、会社が発表する運用報告書、そして有価証券報告書など、情報を伝える文書全般が当てはまります。

総じて、ビジネスに関係している多くの文書が金融翻訳の対象となり、専門性の高さが特徴です。金融翻訳を専門に行なっている翻訳会社も複数あることから、求められる翻訳技術のレベルの高さが伺えるでしょう。

金融翻訳が必要となる場面や文書

金融翻訳が求められる場面は、多岐に渡ります。とくに銀行や証券会社、保険会社のように、国外の顧客との取引も積極的に行なっている金融関連業種は、国内のみならず国外に対してもレポートや財務状況を発信するので、質の高い金融翻訳が必要です。

ほかにも、海外と取引を行なっており、英語圏への出資や契約の依頼、プレリリースを出す必要がある企業なども、正確な翻訳がなければスムーズな取引に繋がらないので、金融翻訳を必要としています。

金融翻訳の対象となる文書は、金融活動に関わる文書全般が含まれているため、非常に広範囲です。

定期的に開示すべき運用報告書や有価証券報告書など、一般的な金融分野の文書のみならず、契約書やマニュアル、プレゼンテーション用の資料など、ビジネスシーンで使用される文書も対象に含まれます。

とくに、会社の業績や活動報告を伝える有価証券報告書は、海外からの投資判断にも使われる文書なので、必然的に翻訳の重要性も高いでしょう。

金融翻訳に求められるスキル

現代のビジネスにおいて欠かせない存在である金融翻訳ですが、当然ながら言語ができるだけでは、高品質の翻訳はできません。

正確な金融翻訳を実現するためには、どのようなスキル・知識が求められているのでしょうか。

地域ごとの経済情勢と表記を反映させる

翻訳するにあたって、使用されている単語や専門用語を正確に訳すのも大切ですが、文書の書式を翻訳する言語の地域に合わせるのも重要です。具体的には、数字や住所、日付、電話番号などが正しい表記になっているか、気を配っておく必要があります。

たとえば、金額を表す数字の区切り方もヨーロッパ方面ではコンマ「,」を使って表していますが、イギリスではドット「.」を使って表しています。

住所の表記も異なり、日本が番地で住所を認識しているのに対して、海外では通りの名前で住所を把握しているパターンも多いです。

また、金融関連の文書を扱うにあたって、為替レートの表記にはとくに気を使いましょう。知ってのとおり、為替レートはそれぞれの国の経済情勢によって大きく変動します。常に最新の為替レート把握し、翻訳に反映できるようにしましょう。

対象国の法規制と会計基準に準拠する

法律は国ごとに大きく異なっていますが、金融業界も国によって違う法規制や、会計基準に従う必要があります。当然翻訳者はそれらを正確に把握し、法規制や会計基準に準拠した翻訳書類を作成しなければいけません。

たとえば、アメリカで事業を展開したい場合、アメリカ証券取引委員会などの機関に書類を提出する必要があります。そのための文書は、当然、英語で用意する必要があります。

金融業界に精通しているのはもちろん、該当事業分野に関連する各国の法規制、そして会計基準も把握することで、高品質の翻訳書類の作成につながるのです。

新しい専門用語を常に把握する

金融翻訳に限った話ではありませんが、業界特有の言い回しや、専門用語の把握は非常に重要です。

翻訳する言語によっては、選択する言葉が難しい場面も多々あるでしょう。そういったケースでもターゲット言語の読み手に誤解なく、正確に情報を届けることができるように、該当分野の専門知識が求められます。

金融業界のルールも国ごとに異なっており、よりいっそう金融用語は複雑です。そのため、会計処理や金融制度に精通している翻訳者である必要があります。

当然ルールも不変ではないので、常に最新情報をチェックし、ルールが更新されるたびに知識をアップデートする臨機応変さも翻訳者にとって重要です。

翻訳前に文書の分析を行う

質の高い翻訳者は、担当する文書の分析を事前に行います。たとえば、文書の構成や筆者が読者に伝えたい内容、原文で使用されている特殊な言い回しなど、あらかじめリサーチしておくことで、どんな文書を、どのように翻訳するのかあらかじめイメージできます。

とくに世界的な金融機関や、成長著しいグローバル企業の文書を翻訳する際には、大切なプロセスです。時間と手間はかかりますが、文書の分析の時間をしっかりと確保することで、結果的にスムーズな翻訳作業につながります。

機密データの保持に注意する

金融翻訳にあたって、正確な文書翻訳を行うのは当然のことでしょう。さらに、預けられた機密情報の保持には、とくに注意を払う必要があります。

金融機関の扱っている情報のなかには、大きく市場を動かしかねないものもあります。そのため、金融翻訳の仕事を受けるにあたって、翻訳者には厳しい守秘義務が課せられるのです。

万が一データが漏洩した場合は、多大な経済的損失を被る可能性もあります。安心できる翻訳サービスの条件として、作業環境のセキュリティや作業データの扱いに、十分に注意を払っているかどうかがポイントとなるでしょう。

金融翻訳に適した翻訳代行会社の選び方

国際社会のグローバル化が進んだ昨今、金融業界における文書の翻訳の需要は高まっています。近年では、金融翻訳を専門に行なっている翻訳会社の数も増えており、業務内容、サービスともに充実しています。

では、そのような環境で、目的に合った翻訳代行会社を選ぶにはどうすればよいのか、ポイントを解説しましょう。

金融翻訳に差がつくポイントは、こちらの記事でも紹介しています。

表現方法に対して柔軟性はあるか

日本語から英語、または英語から日本語に翻訳するにあたって、自然な表現で文書を作れるかどうかは非常に重要です。

翻訳作業の経験がある方なら体験していることですが、翻訳自体はできても、それを第三者にわかりやすく伝える文章にするのには、少々コツが入ります。

優れた翻訳者は、原文を正確に理解し、そのうえでネイティブスピーカーにも通用する、流暢な言語表現で文書を作成してくれます。そのため、仕事が途切れることもありません。

守秘義務や機密保持に関して徹底されているか

金融翻訳で扱う金融情報は、財務会計に関連する情報など、企業にとっては生命線と言っても過言ではない、重要な内容が数多く含まれています。そのため、トラブルの予防や回避のために、徹底した機密保持が必要です。

翻訳企業に仕事を任せる際は、機密情報の取り扱いや、秘密保持契約締結ができるかどうか、必ず事前に確認しておきましょう。説明の内容が不明瞭でわかりにくい企業や、担当者が説明を拒否する場合は、その会社に仕事を依頼するのは避けた方がよいです。

近年は、高度な情報セキュリティを導入している翻訳企業も増えています。翻訳企業選びの際は、セキュリティ周りの環境も含めて調べると、なおよいでしょう。

品質維持のためのチェック体制は整っているか

金融翻訳は専門用語や知識、独自の表現方法を理解しながら、相手にも伝わる文書を作成することが必要不可欠です。

その品質を保つためには、翻訳者本人の知識や技量だけでなく、翻訳会社側にもネイティブチェックや校正などの体制が整っているかも確認しましょう。

翻訳企業を選ぶ際は、少なくともネイティブチェックは必須です。ダブルチェックや、校正なども一緒に行なっていれば、理想的と言えるでしょう。

これらの品質チェックが行われているのか、事前に確認しておくことで、トラブル回避にもつながります。

まとめ

今回は、金融翻訳が必要となる場面や文書、そして翻訳に必要なスキルについてまとめました。

現代では、AIを使用した翻訳技術も日々進歩していますが、現状の機械翻訳ではどうしても限界があります。とくに、原文に対する専門知識が求められる分野の文書の翻訳であれば、なおさらでしょう。

金融翻訳は、流動的に変化する金融業界と、そこでのルールに対して常に最新の知識を有し、それらを自然な形で文書にまとめる翻訳技術と文章力が求められます。

翻訳企業が増えたことで、明らかに技量が足りていない翻訳者が金融翻訳を担当するケースも出てきています。翻訳を依頼する際は、今回解説した重要ポイントをクリアしている翻訳サービスを選びましょう。

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