法律文書の翻訳者は、法律を熟知していなければなりません。なぜなら、単純な翻訳ではなく専門用語を含む複雑な文章を、正確にわかりやすく翻訳しなければならないからです。

しかし、法律文書の翻訳を頼むときに、何を基準に探せばいいのかわからない方もいるのではないでしょうか。

このような疑問にお答えするため、法律翻訳について説明するとともに、翻訳を依頼する際のポイントを詳しくお伝えします。また、翻訳者が持つべき資格についても解説していきます。

法律翻訳とは

法律翻訳とは、法律文書の翻訳全般のことを指します。法律文書は、法的な効力を持つ文書ですので、厳密な正確さが要求されます。また、絶妙なニュアンスにも対応できる質の高い翻訳が求められます。

主な法律文書は以下のものがあります。

● 法律・法令・公法・私法・条例・規則など法律に関する文書の法律翻訳
● 裁判文書・訴状・審判・召喚状・判決文・証拠説明書
● 調書・供述書・陳述書・審判書・調停調書
● 異議通知書・破産宣告の通知
● 判決/判決確定証明書・判例など法律に関する文書
● 海外法令文書・海外法令に関連する資料の法律翻訳

ほかにも、海外ビザ申請用書類や各種企業の会社規定書なども含まれるので、法律文書の翻訳の範囲は幅が広いことがわかります。

文書の翻訳は、原文と翻訳文との情報の一致性や正確性、全体の一貫性なども要求されます。これらが満たされずミスがひとつでも生じると、依頼元に大きな損失を招くおそれがあるでしょう。

以上のことから、法律翻訳は語学力の高さだけでは務まらないことがわかります。企業法務や財務会計など幅広い知識と深い理解が必要不可欠です。また、外国の法律知識も必要なため、一般的な翻訳より難易度が高いと言えるでしょう。

法律翻訳に必要な資格

法律文書を作成する法律翻訳には、資格が必要です。なぜなら、翻訳会社を選ぶポイントとして、語学力だけでなく専門的な法律の知識があるかどうか判断基準になるからです。ここでは、法務翻訳に必要な資格をくわしく解説していきます。

ISO20771とは

ISO20771は、2020年4月に発行された法務関連に特化した国際翻訳規格です。ISO17100やISO18587が、主に翻訳サービス提供者に適用される資格であるのに対し、ISO20771は法務翻訳をおこなう個人の翻訳者に対する規格です。

ですので、ISO20771を持っているということは、高い専門性を持つ法律の翻訳者であることが証明されます。

ISO20771における資格認定

一定の能力を保証する法務翻訳者の資格は、以下の5項目に定められています。

1. 翻訳関連の高等教育機関の卒業資格 + 法律関連の修士号 + 3年以上の法務分野での翻訳実務経験
2. 法律関連の高等教育機関の卒業資格 + 3年以上の法務分野での翻訳実務経験
3. 翻訳関連の高等教育機関の卒業資格 + 5年以上の法務分野での翻訳実務経験
4. 高等教育機関の卒業資格 + 公認法務翻訳士の資格(公的な民間機関の公認)+ 3年以上の法務分野での翻訳実務経験
5. 法務翻訳士の国家資格(国家機関の公認)

資格条件を満たす根拠となる書類については、翻訳者自身が記録・保管していかなければなりません。

ISO20771取得の利点

ISO20771を取得する大きなメリットは、法務分野の翻訳者のプロとして信頼を得られることです。とくに、日本では法務翻訳者を認定する制度がありません。ですから、国際規格が制定されたことは大きなメリットと言えるでしょう。

また、対外的には取引先や顧客から情報のセキュリティ管理能力を認められるので、資格取得は信用度の向上につながります。

翻訳サービス選びのポイント

法律に関する文書は非常に重要なもので、その文書を翻訳するには翻訳者の能力の高さが求められます。

そうはいっても、数ある翻訳会社のなかから、どのようにして能力の高い翻訳者がいるかを見極める方法がわからない、と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。

そのような方のために、優秀な翻訳者が在籍する翻訳会社を見つけるための大切なポイントをお伝えします。

外国法に精通したスタッフの在籍

まず、外国の法律は日本とは違うので、法律分野の翻訳を依頼するのであれば、外国の法律をよく理解しているスタッフがいるかどうかが重要なポイントになります。

なぜなら、外国の法律に詳しくなければ、適切かつ正確に翻訳できないからです。品質を重視するのであれば、ネイティブによるチェック体制が整っているかどうかも判断基準にしましょう。

外国法をよく理解していない翻訳者に発注して、思わぬ損害を招いてしまっては取り返しのつかないことになります。リスクを避けるためにも、しっかりおさえておくべき大切なポイントです。

法律翻訳に対応している

翻訳会社にはそれぞれ得意分野があります。そもそも、法律を得意分野にしていない会社には依頼すべきではありません。なぜなら、法律翻訳の対策をしっかりしていなければ、品質の保証はされないからです。

規模の大きい翻訳会社は安心感があるかもしれませんが、幅広い分野に対応しているため、実績を見ると法律関係の件数は少ない場合もあります。しかし、大手翻訳会社で法律を得意分野としているなら、深い知識を持つ経験豊富な翻訳者が数多く在籍していることがわかります。

法律翻訳の難易度を考えると、やはり法律を得意分野としているかどうかは大切な判断基準になります。

法律通訳をはじめとした、サイマリンガルの得意分野をご紹介します。

過去の実績が豊富

翻訳会社に依頼する前に、過去の実績の確認を忘れてはなりません。会社が多すぎて選べない場合も、実績をチェックすると判断基準がみえてきます。

有名な大企業や官公庁などと取引実績がある会社は、品質の高いサービスが期待できますし、信頼性や実力も備えています。

さらに、取引があるという表面的な部分だけで判断するのではなく、どのような経歴の翻訳者がどういった分野の翻訳を提供したのかまで、深く確認してから判断するとなおよいでしょう。

顧客対応の誠実さ

どの会社でも共通することですが、顧客への対応が誠実であることは非常に重要です。たとえば、過去の実績を調べようとすると、ホームページや資料からはっきりわからない場合があるかもしれません。そのようなときは、遠慮せずに問い合わせてみましょう。

誠実な翻訳会社であれば、こうした質問にもきちんと答えてくれるはずです。ましてや、専門でない案件を簡単に引き受けることもないでしょう。

長く取引する可能性も考えると、返事の速さや的確さに加え、顧客に対しての誠実さはぜひ見ておきたいポイントです。

適切な料金設定

法律翻訳の料金は、翻訳言語やサービスの内容によって異なります。得意な言語や、納品の速さなどは会社によって違いますので、料金設定も同じではありません。

料金が高い場合は、サービス内容がほかよりも充実しているかもしれません。価格だけ比較するのではなく、サービス内容に対して適切かどうかの判断をおすすめします。

まとめ

ここまで、法律翻訳を依頼する際に注目すべき大切なポイントをお伝えしました。また、法律文書の翻訳者が持つべき必要な資格についても詳しく解説しています。

法律文書の翻訳を依頼するときは、翻訳会社の規模の大きさや料金だけで安易に決めることはやめましょう。過去の実績から顧客対応の誠実さまで、できるだけ多くの情報を集めて選ぶことをおすすめします。

比較選定の基準として、役に立つポイントを詳しくお伝えしていますので、優れた翻訳会社を探している方は、ぜひ参考にしてください。

幅広い知識と深い理解が必要不可欠な文書の翻訳は、ひとつ間違えると大きな損失になりかねません。リスクを避けるためにも十分な下調べをして翻訳会社を選ぶようにしましょう。

翻訳会社サイマリンガルは、各省庁および監査法人、法律事務所、上場企業、外資系企業などから信頼されている評判の高い法律翻訳専門の会社です。法律文書・訴状・定款など、法律に関連する文書の翻訳は、ぜひ翻訳会社サイマリンガルへ相談してみましょう。

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