法的拘束力のある契約書を翻訳するとなると、いろんな分野の専門的知識が求められ、翻訳作業を負担に感じてしまうことはないでしょうか。

今回は、契約書の翻訳作業に悩む人向けに、契約書翻訳で重要なポイント5点と優れた翻訳サービスの選び方についてご紹介します。ぜひこの記事を、契約書の翻訳作業へお役立てください。

契約書翻訳における重要なポイント

契約書を翻訳するにあたって、まずは英文契約書と和文契約書の違いをおさえる必要があります。

前提として、英文契約書は「性悪説」に、和文契約書は「性善説」に基づいて作られたものであるという認識をあらかじめ持っておくと、両者の違いを判別しやすくなるでしょう。また、翻訳においては、契約書そのものを作成するうえで必要な知識も必須です。

英文契約書の特徴

英文契約書の特徴は、主に以下のとおりです。

1. 文章が長い
2. 網羅性を満たしている
3. 契約範囲の明確化

1点目の特徴は、英文契約書の文章は長いということです。なぜかというと、契約を交わすもの同士で、解釈の不一致を少しでも減らす必要があるからです。

英文契約書は国際取引において用いられることが多いため、解釈の不一致が生じやすくなります。誰が読んでも同じような解釈にするために、事細かに記す必要があるため、文章がどうしても長くなります。

2点目は、網羅性を満たしているということです。理由としては、口頭証拠排除原則が関係しています。

口頭証拠排除原則とは、英米法で定められている原則です。定義としては、契約内容を最終的に表現する契約書に対して否定あるいは変更するために、契約書作成前の証拠提出を禁止することです。

この原則に基づき、契約内容から将来想定できる事態や懸念材料については、あらかじめ協議し、内容をすべて契約書に書き込む必要があります。そのため、英文契約書には網羅性が求められます。

3点目は、英文契約書では契約範囲が明確化されているということです。なぜなら、英文契約書では、準拠法と合意管轄が作成における重要ポイントとなるためです。

お互い離れた場所で契約が結ばれる国際取引では、国内よりも多くのトラブルが起こる可能性があります。あらかじめ準拠法と合意管轄を結ぶことで、たとえ信頼性に欠ける相手であるとしても、契約書の内容で相手を拘束できます。

また、準拠法と合意管轄以外にも、お互いの連絡方法や対価の授受方法なども明確にしましょう。

和文契約書の特徴

和文契約書の特徴は、主に以下のとおりです。

1. 文章が短く、対応の余地が広い
2. 別途協議事項を設けている

1点目の特徴は、和文契約書は文章が短く、対応の余地が広いということです。対応の余地を広くすることで、契約を交わす両者が得をするような着地点を柔軟に探せます。

対応の余地が広い契約内容の具体例としては、2点目の特徴である「別途協議事項」が代表的な例です。なにか契約上トラブルが起こった際は、相互信頼を前提に、調停や仲裁を選択して解決する傾向があります。

契約書で重視される項目

契約書は、ほかの文書とは違い、法的拘束力を持つ特殊な文書です。そのため、読みやすさよりも重要な項目があります。主に、下記2点の項目を満たすことがとても重要です。

1. 精度の高さが保持されているか
2. 文書全体を見据えているかどうか

1点目に関しては、当事者間の権利と義務などが正しく言語化できているかということです。誤った記載がある場合、深刻な問題へ発展してしまう可能性があります。曖昧な表現は避け、記載漏れがないようにしましょう。

2点目は、文書全体を読んでいる際に矛盾点が見当たらないかということです。矛盾点があると、契約内容自体の意味も変わってくるおそれがあります。文書の最初から最後まで、一義的な意味になる文書になるよう心がけましょう。

契約にまつわる専門的知識

契約書を翻訳する際は、その契約にまつわる専門的知識も把握しておかなければいけません。知識が不十分であると、当事者に大きな損害を与えるリスクも高まります。

では具体的に、どのような専門的知識が必要なのでしょうか。必要とされるものは、主に以下のとおりです。

● 契約書作成に必要な法律知識
● 契約内容に関係する業界の知識
● 相手方の国の法律知識や国際法

上記の知識を把握したうえで契約書を翻訳すると、双方の理解度のムラや、交渉が無駄に長期化する可能性を抑えられるでしょう。

また、専門的知識を契約書に落とし込むだけでなく、相手方に正確に伝わるような言い回しで翻訳することも重要なポイントです。

翻訳契約書が用いられるシーン例をこちらで2点ご紹介します。

秘密保持の厳守

契約書には重要な機密事項が多く記載されているため、翻訳する際には秘密保持を厳守しましょう。

秘密保持が十分でない場合、情報漏洩が発生し、翻訳者や翻訳会社そのものの信頼損失や、契約書の当事者にも多大な損害を与える可能性があります。

翻訳前に情報管理をどのように徹底するかをあらかじめ定め、必要な場合は、お互い秘密保持契約書を締結させましょう。

優れた翻訳サービスの選び方

翻訳会社によっては、得意ジャンルや対応方法に差異があり、どんな会社に依頼したらよいのか分からなくなることもあるでしょう。今回は優れた翻訳サービスの選び方を4つご紹介します。

キャリアや実績

優れた翻訳会社であるかどうかをもっとも判断しやすい基準は、その会社が持っているキャリアや実績です。どういうキャリアや実績を持っていると優れているといえるのか、具体例のひとつは「官公庁や大企業との取引がある」ことです。

ただ、官公庁や大企業との取引があると分かった際は、その会社がどういった文書の翻訳をしたかを忘れずに確認しましょう。社内文書や取り扱い説明書であれば、契約書とは異なる文書であるため、あまり参考になりません。

最新の専門知識の保有

翻訳する契約書にまつわる最新の専門知識をどれだけ保有しているか、事前に確認しましょう。翻訳会社が最新の専門知識をどれほど保有しているかを確認するには、ホームページ上の翻訳者のプロフィールを見るのが有効です。

今までの経歴をもとに、その翻訳者がどれほどの専門知識があるのか簡易的ではありますが、自ずと想像できるでしょう。また、トライアル翻訳に対応している会社であれば、一度トライアルを依頼してみるのもよい方法です。

責任感と誠実さ

いかなる場合でも会社選びに欠かせないポイントである、責任感や誠実さは、翻訳会社を選ぶ際にもやはり重要です。

責任感や誠実さを図るためには、担当者の対応を基準に判断するとよいでしょう。主に、翻訳会社が以下のようなポイントをおさえているか、確認しましょう。

● 対面や写真などで担当者の顔が見えるか
● 疑問点に対する返答が、きちんと行えているか
● 常に連絡がとれる状態であるか
● 依頼内容について、しっかり理解してくれているか

法的拘束力をもった契約書の翻訳に関する委託であるため、責任感や誠実さは、なおさら重要なポイントとなります。

納品のスピーディーさ

ビジネスにおいて、スピードは命といっても過言ではありません。翻訳に関しても、やはりスピードは大事です。

依頼から納品までの全体的なスピードを判断する際は、見積もりや問い合わせに対するレスポンスへのスピードも加味しましょう。複数の翻訳会社に問い合わせ、その際のレスポンスのスピードを計ると分かりやすいです。

ただし、スピードを重視するあまり、正確性が損なわれてしまっては本末転倒なため、品質確認は怠らないようにしましょう。

まとめ

今回は、契約書を翻訳する際の重要なポイントや優れた翻訳会社の選び方について開設しました。英文契約書と和文契約書それぞれの特徴を捉え、専門知識を適切に取り入れることが、翻訳において重要なことです。

また、翻訳会社を選ぶ際は、キャリアや実績、スピード感などを、担当者とのやり取りやトライアル翻訳を通じて委託するかどうかを判断しましょう。

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