グローバル経済・社会の進展に伴い、企業不祥事の多発、地球環境汚染、格差社会の拡大、製造物責任問題、労働環境の悪化、企業倫理の逸脱などさまざまな問題が表面化し、企業活動の在り方に目が向けられるようになると、社会の一員である企業は持続可能な社会を目指し、関係するさまざまなステークホルダー(利害関係者)に対して責任ある経営を行うことが求められるようになりました。
こうした概念が、CSR(Corporate Social Responsibility)=「企業の社会的責任」として社会に浸透し、企業はその取組をCSR報告書という形で、各ステークホルダーに向けて発信しています。

利害関係者との関わりが多岐にわたるため、CSR報告書の翻訳ニーズは高く、日本語・英語・中国語をはじめ、海外進出先の言語版を発行している企業も多くあります。
また、CSRの内容を包含し、かつ財務情報を加えた「統合報告書」の報告形態への移行もみられており、翻訳の際には財務や環境など異なった分野にも柔軟な対応が求められます。

●CSR報告書は各種ガイドラインに沿ってまとめられている

1990年に欧米を中心に、企業の持続可能性をテーマとしたサステナビリティ報告書が作成され、日本でも「環境経営」の流れを汲んで2000年以降、CSRの取組みが普及しました。各企業では、その取組み方に沿って、CSR報告書やサステナビリティ報告書、環境報告書などを自主的に発行しています。

CSRは、企業の社会・環境問題への責任ある対応との概念として発展し、その過程でスイスの非営利法人「ISO(International Organization for Standardization)」(国際標準化機構)や、アムステルダムの非営利法人「GRI(Global Reporting Initiative)」、さらに国連が2001年に策定したミレニアム開発目標、その後継として2015年に策定された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれた「SDGs(Sustainable Development Goals)」(持続的な開発目標)など、複数の機関が打ち出した指針を自社内のチェック項目として取り込んできました。

その他、ガイドラインに用いる主要機関には以下のようなものがあります。

・SASB(Sustainability Accounting Standards Board)(サステナビリティ会計基準審議会)
・環境省:環境報告ガイドライン」/・国連気候変動に関する政府間パネル
・IEA(International Energy Agency)(国際エネルギー機関):年次報告書

これらの国際標準指針を基に、企業は取組状況をマテリアリティ(重要課題)として抽出した上で、「優先課題の達成に向けた目標(KPIなど)」を設定し、PDCA(プラン、実行、チェック、改善)として実践していくのが、CSRの具体的なシステムとなります。
そしてこれらの取組状況を報告書形式にまとめたものが、CSR報告書です。

▼ガイドラインの項目との用語統一はCSR報告書の翻訳の生命性

CSR報告書は上記のように、企業活動及び環境面の指針を基に各企業の取組方が報告されています。大きくは、事業内容、地球環境、消費者対応、労働環境、取引先関係、地域社会関与、財務状況、内部統制、リスク管理などのテーマが柱になっており、それらをガイダンスに照らし合わせて、各企業の状況が取りまとめられています。

翻訳に際しては、CSR報告書で採用されているガイドラインの翻訳版をベースにし、そこで使用されている用語を必ず用いる必要があります。

また、主に製造業を営む企業は、各工場ごとにCSR報告書のミニ版を作成している場合もあり、CSR報告書の翻訳は一度決めた用語を、全てのページや関連・付属書類においても使用することが大前提にあり、用語の統一は正に翻訳の生命線と言えます。

▼多種多様の指標、数値単位の正確性が求められる

環境面の取組みについて詳述されているため、環境やエネルギー関連のさまざまな専門用語や指標、数値単位が頻出します。特に、工場の環境データは極めて専門性が高いデータが表記されています。CO2排出量やサプライチェーンの排出量を分類したScope3、化学物質の使用状況、水資源利用状況、廃棄物・排水量などなど多岐にわたります。これらの用語についても、国内外で定められている定訳を用いて翻訳する必要があります。

併せて、これらの指標の数値単位も国内外の基準単位で統一します。長さ、重さ、面積、体積、温度、時間、電流、水素イオン指数、振動数、熱量など、非常に多くの単位が使用されています。

▼「統合報告書」との整合性も必須

CSRの要素を定性的情報とし、財務面の定量情報を加えたものが、「統合報告書」と呼ばれ、近年、CSR報告書とともに作成、或いは統合報告書に一本化する流れが見られており、翻訳においては、環境や財務という異なった分野を流暢に訳す柔軟性が求められます。

サイマリンガルは、CSR報告書、統合報告書の翻訳を専門的に扱っています

サイマリンガルでは、創業以来、金融分野に注力してきた実績があり、CSR報告書、統合報告書、サステナビリティ報告書、環境報告書などの翻訳において、企業のCSR活動をサポート致します。
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