ビジネスのグローバル化にともない、海外の投資家が増加の傾向にあります。それとともに、企業の財務情報を開示する決算書翻訳の需要も増えています。

決算書は、企業が成功しているかどうかを示す重要な書類のため、ひとつのミスもなく完璧に、わかりやすく翻訳しなければなりません。さらに、国際基準に従った会計の英文で情報を開示する必要があります。

ここでは、決算書を翻訳する必要性を詳しく解説するとともに、翻訳者に求められる知識について解説していきます。

決算書の翻訳はなぜ必要なのか

決算書は、企業がその年にどのくらい収益を上げ、どのくらい支出したかを示す財務報告書です。企業は決算書を毎年公表し、投資家や顧客に自社の財務状況を正確に伝えなければなりません。

グローバル化が進むにともない、海外の投資家は増加しています。そのため、決算書を翻訳する必要性は言うまでもありません。また、日本の企業が海外に進出する場合も現地の言語に翻訳する必要があります。

決算書の翻訳が重要な理由は、投資家や顧客が企業の正確な情報を得るためです。投資家は、自分たちが投資する企業の財務状況を正確に把握するため、決算書を必要とします。一方顧客は、自分たちが取引する企業が安定しているかどうかを知りたいのです。

翻訳がなければ、投資家や顧客は正確な情報を受け取ることができません。つまり、決算書の翻訳の必要性は、企業が投資家や顧客に正確な情報を提供するためといえます。

決算書の目的

決算書は、税務署に申告するために必要な書類ですが、税務署に提出するためだけに作成する書類ではありません。では、ほかにどのような目的があるのでしょうか。

決算書の目的は、企業の財務状況を公開し、投資家や顧客に対して、企業がどのようにして利益を得たのか、また企業が健全で安定しているかを示すことです。

言いかえれば、客観的に自社の経営状態、財務状態を知るための書類でもあります。決算書をさまざまな角度から分析すると、経営していくうえで常に考えなければならない事業の効率化や問題点が見えてきます。これらを改善することで、投資家や顧客に対して企業の信頼性を高めていけるのです。

また、決算書は1年ごとに企業の経営について見直しをする際の資料でもあり、金融機関などから資金調達する場合も提出しなければなりません。ほかにも、自社だけでなく競合の経営状況を把握する資料としても役立ちます。

決算書は、税務署に提出するだけではなく、会社の経営実態を知るために必要な書類でもあるのです。

決算書主要5種と英語表現

企業が会計年度中に得た利益や収益、支出、負債、資産などの経済活動を記録する決算書には、5つの種類があります。ここでは、その5つの書類の役割と、英語表現について説明します。

貸借対照表

賃借対照表は、企業の資産・負債・純資産を示す財務諸表です。資産は企業が所有しているものや債権、お金などを示し、負債は企業が支払うべき債務、借金、未払いなどを示します。純資産は、企業の資産から負債を差し引いた残りの額で、企業の純資産を示します。

このように賃借対照表は、企業の健康診断のようなもので、十分な支払い能力があるか、安全性が高いかなどを読み取れるのです。英語表記は、B/S(Balance Sheet)です。

損益計算書

損益計算書は、企業の会計年度中の収益と支出を示す財務諸表です。収益は、企業が売り上げた商品や提供したサービスから得た収入を示し、支出は、売上原価、経費、人件費などの費用を示します。

このように損益計算書は、企業の成績表のようなもので、一定の期間にどれくらい儲かっているのか、損をしているのかを読み取ることができます。英語表記は、P/L(Profit and Loss Statement)です。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は、企業が会計年度中に現金で受け取ったお金と、支払ったお金を示す財務諸表です。

損益計算書でもお金の流れはわかりますが、損益計算書では足りない点を補う役割があり「営業」「投資」「財務」それぞれの現金の流れが読み取れます。

営業キャッシュフローがマイナスになっている企業はうまくいっていない可能性が高く、借入金などの返済に資金をまわせない状態であると予想できます。英語表記は、C/F(Cash Flow Statement)です。

株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は、企業の株主資本の変動を示す財務諸表です。大きく、資本金・新株予約権・資本剰余金・利益剰余金の4つに分けて記載されます。

企業の株式の発行や、自己株式の買い戻しなどによる株主資本の増減を示します。会社法により計算書類として設定され、すべての会社に作成義務があります。英語表記は、S/S(Statements of Shareholders’ Equity)です。

個別注記表

個別注記表は、企業の決算書において財務諸表の内容を補足するための書類です。参考内容などが一覧化してまとめられており、こちらも会社法によって作成が義務づけられています。英語表記は、notes to non-consolidated financial statemetns です。

決算書翻訳に求められるものとは

決算書の翻訳は、正確であることが最も重要です。どんなに小さなミスも許されず、緻密に確実に作成しなければなりません。

会計の豊富な知識を持っているのはもちろんのこと、適切な専門用語を用いて正確に翻訳する必要があります。また、財務分析のための翻訳は、会計基準に対する理解が必要不可欠です。ここでは、決算書翻訳を依頼するときの大切なポイントをお伝えします。

会計や専門用語の知識

決算書の翻訳は、高い語学力が必要であることに加えて、会計・財務分野で使う専門用語を熟知していなければなりません。原文の意味を正確にわかりやすく伝える必要があります。

財務分析においては、特定の専門用語の理解と、数字や比率などの正確な表現が求められます。内容を理解するうえでカギとなる重要な用語がいくつもあり、的確に理解していなければ正確な翻訳はできません。

財務翻訳では、定めておくべきスタイル項目があります。こちらの記事をご覧ください。

国際財務報告基準の把握

近年のグローバル化にともない、国際財務報告基準(IFRS)を導入する企業が増えてきました。海外ではほとんどの国が国際財務報告基準(IFRS)を採用しており、日本の会計基準とは表示する内容や考え方が異なります。

ですので、国際財務報告基準(IFRS)の内容を正確に把握していなければ、決算書の翻訳は完成度の高い書類にはならないでしょう。

翻訳の経験と実績

決算書の翻訳を依頼するときは、経験豊富な翻訳者が多く在籍し、実績のある翻訳会社を選びましょう。なぜなら、決算書の品質面が保証されるほか、翻訳は公開前の機密性の高い文書を取り扱うので、徹底したセキュリティ体制が整っていなければならないからです。

インターネットの安全性、機密保持、ファイルの暗号化など、データを保護する対策も経験と実績があれば安心して依頼できるでしょう。

まとめ

ここまで、決算書を翻訳すべき理由と、翻訳者に求められる知識について詳しく解説しました。グローバル化が進むなか、企業は海外投資家や顧客との取引が増加しており、企業の債務情報を正確に伝えて、信頼関係を構築するのは重要です。

そのためには、決算書の翻訳者は高い語学力に加えて、会計・財務の専門用語と理解が必須であり、対象となる分野について広く深い知識を持っていなければなりません。なぜなら、小さな見落としや間違いが企業に大きな損失を与えることになるからです。

また、納期の厳守と万全なセキュリティ対策、強固なチェック体制によって品質面が保証されます。翻訳会社に依頼する際は、経験豊富な翻訳者が多く在籍し、実績のある会社を選びましょう。

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