仕事の資料やメールの文面などを、他国の言語に翻訳するために、翻訳サイトを利用している人も少なくないでしょう。

しかし、機密情報や契約書の内容、個人情報が載っているメールの文面などを、翻訳サイトで翻訳した場合「セキュリティ的に大丈夫だろうか」と思ったことはありませんか?

とくに、無料の翻訳サイトを利用する場合、リスクを把握したうえで利用しないと、機密情報が漏えいしたり、情報を不正に利用されたりする可能性があります。

そこで本記事では、無料翻訳サイトの危険性や機密性の高い情報を翻訳するためにはどのようにしたらよいか解説します。

翻訳サイトのセキュリティの危険性

翻訳サイトを利用する際には、セキュリティ上の危険性が存在します。翻訳サイトを利用するときのリスクについて解説します。

情報漏洩のリスク

機密性の高い情報や個人情報を含む文書を翻訳する際には、注意が必要です。無料の翻訳サイトでは、データがどのように管理されているか定かではなく、入力データが外部に漏えいする可能性があるからです。

過去には実際に、無料の機械翻訳サービスで翻訳されたデータが、外部に流出した事例も報告されています。たとえば、2015年2月には、クラウド翻訳サービスに入力した内容が、不特定多数に閲覧できる状態になっていたという問題が発生しました。

個人間のメールのやり取りの内容や採用情報などの個人を特定できる情報が、誰でも閲覧できる状況になっていたため、こうしたサービスの利用について、IPA(情報処理推進機構)が注意喚起を行っています。

クラウド翻訳サービスなどは、便利なサービスである一方で、情報漏えいのリスクがあることを覚えておく必要があります。

データ蓄積のリスク

クラウド翻訳サービスや無料の翻訳サービスを使う場合、入力データが不正に利用される可能性もゼロではありません。なぜならNDA(秘密保持契約)を結んでいないからです。

翻訳サイトでは、入力した原文のデータをサーバーに蓄積している場合があります。その目的は、サービス品質の向上のためとしているケースが多いでしょう。しかし、NDAも締結していないうえに、情報がどのように扱われているか、実際のところ利用者にはわかりません。

たとえば、Google翻訳も翻訳内容や単語を収集していますが、このデータの使われ方は利用者にはわかりません。データをサーバーに蓄積するということは、情報が流出する危険性や、サービスの担当者に不正に情報を利用される可能性もあります。

こうしたリスクが不安な場合は、クラウドや無料の翻訳サイトを使用しない、機密情報の入力を避けるなどの対策が必要です。また、翻訳会社に依頼するのも1つの手です。

入力したデータが蓄積され、どのように使われているのかは、利用者にとってブラックボックスです。データの取り扱われ方に不安を感じる場合は、翻訳会社へ依頼することがもっとも安心できる方法でしょう。翻訳会社に依頼した場合、データをサーバーに蓄積しないため、情報漏えいの心配がなく、NDAの締結もあるからです。

翻訳サイトの無料版と有料版の違い

翻訳サイトには無料版と有料版が存在し、セキュリティ、カスタマイズ性、コストにおいて違いがあります。

セキュリティ

一般的に、無料の翻訳サービスを使う場合、NDAを締結しません。NDAを締結しない場合、入力データを運営者側に不正利用される可能性があります。たとえば、新製品に関する機密情報を、海外のクライアント向けに翻訳していたところ、入力データを不正に利用されて機密情報が漏れてしまうなどのリスクが考えられます。

一方で、有料の翻訳サービスの場合は、NDAの締結を行う場合が多いため、情報が不正に利用される心配はありません。また、ほとんどのサービスで一定期間後に関連データが削除されるシステムになっているため、情報漏えいのリスクも低いです。

クラウド型ではなく、インストールしてオフライン環境で使うタイプの翻訳サービスであれば、インターネットを介して情報が漏れてしまう可能性はさらに低くなるでしょう。

カスタマイズ

有料の翻訳サービスでは、利用者の特性に応じてシステムをカスタマイズできることが多いです。たとえば、専門用語などを辞書登録できる機能やグループ管理機能などがあります。

有料の翻訳サービスでは、翻訳するジャンルに応じた専門用語などを多く収録しているものやほかのツールとの連携に強いもの、プラグインに対応しているものなど、利用者それぞれが自分の使いやすいようにカスタマイズできるものが多いです。

一方で、無料の翻訳サービスは、入力文字数に制限があるものやシンプルな機能のものが多いです。日常的に、大量の文章を翻訳する必要がある人やほかのツールと連携させて使いたいという人にとっては、やや不便なケースもあるでしょう。

コスト

無料の翻訳サービスのよいところは、費用がかからないことです。一度に翻訳できる文字数に限界があるサービスが多く、一度に大量に翻訳する場合はやや不便ですが、複数回に分けて翻訳すれば無料で長文の翻訳ができます。

情報漏えいのリスクなどもとくに気にせず、シンプルに翻訳だけできればよいという場合には、無料の翻訳サービスも有効な選択肢です。

一方で、有料の翻訳サービスは、翻訳できる文字数も数十万文字、もしくは制限なしなど、プラン次第で大量に翻訳ができるため高効率です。翻訳の精度も高く、仕事で文章を翻訳する必要がある人に向いています。

ただし、プランによっては、月額3,000円程度から利用できるものもありますが、基本的には数万円から数十万円の費用がかかるサービスが多く、導入には慎重な判断が求められます。

安全に翻訳するにはどうすればよいのか

安全に翻訳するためには、3つのポイントがあります。下記では、安全に翻訳するためのポイントについて、解説します。

翻訳会社に依頼する

安心・安全に翻訳したい場合は、翻訳会社へ依頼することがもっとも安全です。翻訳会社へ依頼する場合、NDAを結ぶため、原稿に書かれている内容を不正に利用されることがありません。また、クラウドにアップロードもしないため、情報漏えいリスクも低いです。

とくに、契約書やプロジェクトの資料のように、機密性の高いデータを翻訳したい場合は、クラウドサービスを利用するよりも、翻訳会社への依頼が安心です。

翻訳サイトの利用規約を確認する

翻訳サイトの利用規約を確認し、入力したデータがどのように利用されるのか確かめましょう。サイトのなかには、入力した情報の取り扱い方法は運営者に委ねるものとしているサイトもあります。

とくに、無料の翻訳サービスは、翻訳に当たりNDAを締結しません。NDAを結ばない場合、入力したデータが不正に利用される可能性があるため、利用規約はかならず確認しましょう、

有料版を契約する

有料の翻訳サービスは、利用時にNDAを締結することがほとんどです。NDAを締結していれば、翻訳データが不正に利用される心配がありません。

また、多くのサービスでは、一定時間経過後に翻訳データが自動で削除されるものや、手動で削除できるシステムを採用しており、残存データが漏えいするトラブルを避けられます。

セキュリティリスクが心配な場合、無料版よりも有料版を利用した方が、安心して翻訳できるでしょう。

無料の翻訳サイトのなかに、ChatGPTというサービスがあります。ChatGPTで翻訳をするときのコツや注意点について、こちらで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

まとめ

本記事では、翻訳サイトのセキュリティリスクと対策について解説しました。無料の翻訳サイトの場合、基本的にNDAを締結しないため、翻訳にかけたデータを不正利用される可能性があります。また、クラウドにアップロードするタイプの場合、サーバーに蓄積したデータが漏えいする可能性も否定できません。

こうしたリスクが心配な場合は、有料の翻訳サイトや翻訳サービスを利用したり、翻訳会社に任せたりすると安心です。とくに、翻訳会社ではNDAの締結はもちろん、クラウドにアップロードすることもないため、情報漏えいリスクも低いです。機密性の高いデータを翻訳する必要がある場合は、特に利用を検討するとよいでしょう。

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